「オッペンハイマー」 | 土方美雄の日々これ・・・

「オッペンハイマー」

まぁ、「原爆の父」ロバート・オッペンハイマーを主人公にした時点で、一体、どういう映画になるかは、はじめから、わかっていたといえる。クリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」は、アカデミー賞も獲って、おおむね、高評価らしい。

物理学者のオッペンハイマーは、アメリカ合州国のすすめるマンハッタン計画のリーダーとなり、原爆を開発し、その原爆は、米軍によって、すぐに、広島と長崎に投下され、甚大な被害をもたらすことになる。その威力に衝撃を受けたオッペンハイマーは、原爆に続く、水爆の開発には反対の意を表明し、結果的には、巷の「赤狩り」にも巻き込まれ、共産党支持の過去を、問われることになる。

しかし、これは本当に、反戦の映画なのか???オッペンハイマーは、原爆の開発に、極めて積極的だったし、原爆を広島と長崎に落として、その威力を見せつけることで、戦争は終わると、周囲に、主張し続けていた。本当は、ドイツに落としたかった・・とも。原爆を落とすことで、日本の民衆に被害が出ることも、当然のことながら、想定していた。たとえ、五千や1万の民衆が死んでも、それによって、平和がもたらされるとまで、彼はいってのけたのだ。実際には、原爆の被害は、オッペンハイマーの想定をはるかに超えるものであったし、結果的には、原爆の発明は、世界をさらなる軍拡競争へと巻き込んでいくことになるのである。決して、原爆を落とすことで、平和は来なかったのだから、彼の考えはすべて間違っており、その責任を彼が負うことは、明々白々だ。第1、平和のための原爆という考え方自体が、そもそも、間違っている。そのための犠牲になるのは、常に、民衆なのだ。ウン十万なら問題で、五千や一万なら、許容範囲だなどということは、絶対に、ない。

故に、私は、この映画を、決して、評価しない。もちろん、広島・長崎の被害を、声高に叫ぶ一方で、日本のアジアへの加害の実態に目をつぶる傾向にも、同様に、絶対に、反対である。

オッペンハイマーには、キリアン・マーフィー、その妻・キティにエミリー・グラント、その他、ロバート・ダウニーJr.、ケネス・ブラナー、マッド・デイモン等、豪華な顔ぶれが揃った。